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かちうんまけうん
勝ち運負け運
佐々木 邦
「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页
と拳に息を吹きかけて見せた。
下町の連中は商売が定まっているから、余り動かない。土着のものが多い。小学校の同窓会には昔のまゝの顔触れが揃う。懐しいものだ。僕は三四年前に学校の会でこの森本君と隣り同志に坐り合せた。種々と話している中に、
「金子さん、あなたは子供の時お人が悪かったですね。僕は随分苛められました」
と森本君は思いついたように言い出した。
「そんなことはないでしょう。君の方が上級生だもの」
「いや、僕は二級下です。あなたのお隣りの市岡さんの妹さんと同級でした。組は無論違いましたけれど」
「そうだったかね」
と思い違いを装ったが、そんな頭の悪い僕ではない。
「豊子さんといゝましたね、あの人は」
「さあ」
「豊子さんと口をきくと、これだって次第でした」
と森本君は拳を固めて見せた。二十年も前の敵討ちの積りだ。性が悪い。
「そんな詰まらないことをいつまでも覚えていると、本当にこれだよ」
「ハッハヽヽ」
「ハッハヽヽ」
と僕は笑って誤魔化した。森本君は矢張り薬種屋をやっている。近いから時々往来で行き会うけれど、打ち寛いで話すのは初めてだった。商売の方も成績が好いらしい。