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ちきゅうとうなん
地球盗難
海野 十三
「ラヂオ科学」1936(昭和11)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,072 字 · 168 页
晴れわたった夜空には月もなく、ただ銀河系の群星が暗黒な空間にダイヤモンドの砂を撒いたようにキラキラと燦いていた。絶好の小暗い空模様だった。
「さあ、いよいよ出発だ」
「ああ、もうソロソロいい時刻だ。では出掛けるとしよう」
大隅学士は風呂敷包を小脇に抱え佐々記者は飛行服に身を固め、いずれも至極無造作に宿を立ち出でた。そして通りへ出ると、二人は改めて握手をした。
「じゃ、しっかり頼むぞ」
「うん大丈夫。では君もしっかりやれよ」
そういって二人は左右に分れた。佐々記者の方は「空の虱」を置いてある広場の方へ、大隅学士はスタスタ上り坂を昇っていった。二人は何を始めようというのだろう。
それから暫く経った後のこと、山麓に広大な地域を占める辻川博士邸の上空にあたって只ならぬ怪音が近づいた。それはどうやら飛行機の音のようであったが、だんだんと舞い下ってきてやがて屋根とすれすれになるほど近づいた。そして怪飛行機は、邸の上を往きつ戻りつして、一向に飛び去る模様がなかった。明かにこの博士邸が狙われている様子だった。博士の邸内は俄かに騒然としてきた。
そのときだった。また飛行機が低空を飛んできて、博士邸の真上を飛び去ったかと思った途端、城のように高い壁に擁せられた正門の鉄扉に何かが当ってガーンと鳴り響いた。