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ちきゅうとうなん

地球盗難

海野 十三

「ラヂオ科学」1936(昭和11)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,072 字 · 168 页

青空文庫

怪博士の餌食?

「ウム、忍びこむのは今だ……」

大隅学士は、かねて見当をつけて置いた裏手の入口へ廻った。そこからは岩蔵がよく出入をしていたのである。扉に近づいてソッと押してみると、果してそこには錠がかかっていなかった。

「締めた!……」

大隅学士は勇躍して、中に潜入した。そこにはズッと小暗い長廊下がつづいて居り、その奥の方には明るい広間が見える。学士はその広間を目指し、カーテンの蔭に添って足音を忍びながらソロソロと近づいていった。しかしそこにはもう既に恐ろしい陥穽が待ちうけていたのだった。

「……呀ッ……」

と声を立てる遑もなく、傍らのカーテンから、太い二本の腕がニュッと飛びだしたと思うと、大隅学士の喉を、後方からグッと締めたのである。

怪博士の餌食?

「ウム……」

残念だ! なにをッ……と、大隅は怪人物の腕から脱れようとするが、そうはさせまいと、いよいよ咽喉はギュウギュウ締めつけられてくる。そのうち、とうとう頭脳がポーッとしてきて、なにがなんだか分らなくなった。……

大隅が抵抗しなくなると、彼をしめつけた腕は、やっと大隅の首から離れた。やがてカーテンの蔭からヌッと現れてきたのは、まるで西洋の悪魔が無人島に流されたような実に凄愴な顔をした辻川博士だった。