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てんのう
天皇
蜷川 新
誰が日本民族の主人であるか
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 136,036 字 · 269 页
稲目をくわえれば、八十年におよぶのである。
この期間に、皇族のなかに不平の人が出てきた。それも人間の常識として、ありうることである。のちに天皇天智となった中大兄皇子が、その人であった。レジスタンス式の気力をそなえた人物であったにちがいない。その人は、中臣鎌子と共謀して、蘇我氏の権力を奪うことを企てた。その計画は、きわめて密であったとみえる。西暦六四五年の六月の出来事であった。
中大兄の同志はわずかに五人であったが、大胆にも、宮中で入鹿を刺し殺した。ついで蝦夷を殺害した。そうして完全に、権力を、その一派の手に握ったのである。人間が非凡であったことを物語るものである。しかしながら、中大兄は、聖徳ある大人物ではなかった。奸智にたけた人物であったことを、当時の歴史がしめしている。それは、つぎの事実によって判断されるのである。
暗殺は六月におこなわれたが、それから、わずか二ヵ月たった八月に、中大兄の兄にあたる古人大兄王が、中大兄にたいして反逆を企てた。多くの名家が、その反逆事件に関係していた。事態の重大性を示している。
ついで、その年の十二月には、中大兄の宮殿に怪火があがった。