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てんのう
天皇
蜷川 新
誰が日本民族の主人であるか
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 136,036 字 · 269 页
このとき以後の日本は、日本の国史上、いまだかつてなかった「天皇権力万能主義」の国と、一変したのである。
伊藤を立憲政治の恩人のごとくに賛美した従来の歴史家は、伊藤への追従者であって、それは憲法なるものが、本来いかなる性質のものであるかを、知らない人の盲評であるといえる。
フランスの有名な「人権宣言」第十六条には、「権利の保障の確固ならず、かつ権力の分立の確立せられざる社会は、すべて、憲法を有するものにあらず。」と宣示してある。日本の明治憲法には、人権の保障も、三権分立も、正確には規定されていなかったのであって、名ばかりの憲法たるにすぎなかった。しかも、天皇にのみ、憲法改正の権利が認められており、その一事だけでも、専制主義そのものであった。その結果、軍人は、天皇を抱きこみ、無謀の大戦争をひきおこし、ついに醜態を世界にさらすことになったのである。
この天皇権力万能の明治憲法の弊害については、幣原喜重郎の『外交五十年』および福留繁の『海軍の反省』にも言明するところである。たとえば、つぎのようなことがそれである。
『外交五十年』のなかには、「軍の内部は、下剋上で、陸軍大臣も、海軍大臣も、ほとんど結束した青年将校を、抑えることはできなかった。