轻松读懂日语经典作品
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ようちゅう
妖虫
江戸川 乱歩
「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页
眼が闇に慣れるに従って、星空の下の墓地や建物が、薄りと見分けられた。
その煉瓦塀は、所々煉瓦がくずれていた上に、昔門扉があったと覚しき個所が、大きく、何かの口の様に開いて、その内部は、一面に足を埋める叢であった。
相川青年は、見張りの者でもいはしないかと、闇をすかして確めてから、まるで忍術使いの様に、物の蔭を伝いながら、叢のそよぎにも注意して、煉瓦塀の中へと辷り込んで行った。叢の中に、真黒な怪物が蹲ってでもいる様に、和風の平屋が建っていたが、内部に人のいる様子もなく、物音は勿論、一点の光も見えなかった。
相川青年は、叢にしゃがんで、身体で覆い隠す様にして、ライターをつけ、その光で腕時計を見た。十一時四十分だ。
それから十二時までの二十分を、彼はどんなに長々しく感じた事であろう。彼は、叢の中の灌木の蔭に身を隠して、煉瓦塀の口を開いた個所と、正面の建物とを、若しそこから何者かが入って来はしないか、若し家のどこかから光が漏れはしないかと、そればかりを待ち構えていた。
彼はそれ程真剣に凶事を待ち構えながら、何かしら夢を見ている様な、奇怪な遊戯に耽っている様な気持で、心から、現実の人殺しなどを想像することは出来なかった。