轻松读懂日语经典作品
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ようちゅう
妖虫
江戸川 乱歩
「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页
は殺人鬼の白羽の矢であった。世にも恐ろしい死の宣告であった。
彼女の繊細な神経は、恐怖の余り、変調を来たさないではいられなかった。品子はその夜から、えたいの知れぬ悪夢にせめさいなまれた。
見る限り灰色の大空に、何かしら途方もなく巨大な生きものが、朦朧と覆いかぶさって、不気味なスロー・モーションで蠢いていた。
そいつの身体は、大空の果から果まで伸びて、天日を遮りながら、黒雲の如く横わり、八本の曲りくねった巨大な脚が、モゾモゾと蠢きながら、豆粒の様に小さい品子の上に、掴みかかって来るかと思われた。
そいつの胴体は、沢山の関節から出来ていて、その関節の一つ一つが、大戦闘艦程の大きさを持っていた。
海底の生きものの様にボンヤリとしか見えなかったけれど、そいつには、馬鹿馬鹿しく大きな顔があった。顕微鏡で拡大した毒蜘蛛の頭部の様な、醜怪極まりなき顔があった。そして、その頭部から、平家蟹の螯が二本、ニョッキリと、遙かの地平線へ伸びて、呼吸をする様に閉じたり開いたりしていた。
そいつには又、太古の生物恐竜そっくりの、見るも恐ろしい尻尾があって、それがいまわしい黒い虹の様に醜く彎曲し、その先端に、実物を千倍に拡大した程の槍の穂先が、ドキドキと鋭く光って見えた。