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ようちゅう

妖虫

江戸川 乱歩

「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页

青空文庫

悪魔の紋章

彼は墓地の中を気違いの様に走った。

悪魔の紋章

派出所に居合わせた二人の警官が、相川青年の案内で、現場に駈けつけたのは、それから十五分程後であった。

彼等は塀の中の広い叢を突切って、いきなり問題の部屋へと突進した。惨劇はその部屋で行われていたのだから、これは実に無理もない行動であったが、若し屋内に踏み込む前に、外の叢を一応調べて見る余裕があったなら、彼等は、その叢の闇の中に、異様な人影が蠢いていたのを発見したに相違ない。そして又、如何に大胆不敵の兇賊でも、あの様な恐ろしい諧謔を弄する暇がなかったことであろう。

それは兎も角、一青年と二警官とは、さい前の雨戸の外に立って、内部の様子を窺ったが、もうその時には、隙漏る明りも見えず、人の気配さえしなかった。

「逃げてしまったかな」

「ウン、そうかも知れん。戸を破って踏ん込んで見よう」

一人の警官がいきなり肩をぶッつけると、大きな音がして、一枚の雨戸が倒れた。三人はその隙間から、警官が用意して来た懐中電燈の光をたよりに、部屋の中へと上り込んで行った。

「妙だね、なんにも居ないじゃないか」

「別に血のあともないし」

警官達はそんなことを呟きながらも、流石は職掌柄、部屋から部屋へと、注意深く歩き廻って、押入は勿論、台所の上げ板の下まで覗き込んだが、不思議なことに、猫の子一匹発見