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ようちゅう

妖虫

江戸川 乱歩

「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页

青空文庫

「俺達だって? すると貴様は……」

「ハハハ……、やっと分ったね。云ってごらん、その次を」

「赤い蠍」

「ウン、その通り。君はなかなか頭がいいよ。ハハハ……」

あの鬚をむしり取って見なければ、こいつが青眼鏡の本人かどうかは分らない。併し殺人鬼の同類には極まっているのだ。

さい前案内の男を室内に入れさせなかった理由が、今こそ分った。こいつは本物の三笠氏ではないものだから、初対面の守はごまかせても、弟子の前に顔を曝す程自信がなかったからだ。

「で、僕をどうしようというのだ」

「殺しはしない。安心し給え。ただちょっとの間、窮屈な思いをして貰おうというのさ。この家は、実にお誂向きのカラクリ仕掛けになっているのでね」

併し守青年は、この毒舌を半分しか聞かなかった。アッと思う間に、彼の踏んでいる床板が、消えてなくなったからだ。

グラグラと眩暈がして、世界が遠のいて行くのを感じたかと思うと、グンと脊骨が砕ける様なショックを受けた。

「ハハハ……、マアごゆっくり」

遠くの世界から、そんな声が聞えて来た。痛さをこらえて見上げると、遙かの天井に四角な白いものがある。

(アア、あれが陥穽の口なんだな。