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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

06 第六分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页

青空文庫

べ、神酒をささげ、のりとを奉じ、家士一統、潔斎して、

「士魂のうえ、常に神あり。神いますところ、四時、この旗あり。――誓って神意にたがい申すまじ事」

と、宣誓の式をとり行い、やがて城頭に翻したものである。

それはまたおそろしく大きな旗幟だった。幅は練絹で三幅。長さは一丈三尺。上下一尺五寸ほどは黒く染めて、上部の黒の中には永楽銭の紋を染め出し、その竿頭には「まねき」と呼ぶ一幅三尺ぐらいな五色の布を虹のごとく吹き流してある。

馬印も、それにつれて、雄大なものだった。余りに、これ見よがしに過ぎはしまいかと、家臣のひとりが、官兵衛にいうと、

「否々。筑前どのは、なべて豪気雄大の風がお好きだ」

と、彼は答えた。

また、従来の永楽銭の紋のほかに、藤の花を巴にした紋を定紋に加えた。これも官兵衛の考案とあるので、家中の人々は、何で藤巴を選んだか、彼の心を酌みかねていたが、きょう軍旗祭の神酒を一同していただく席上で、官兵衛からこういう話があった。

「――かつて、わしが伊丹城の獄中に囚われていたとき、獄舎の窓に、藤の花が咲いていた。この藤の花が咲きみつる頃は、到底、わが生命はあるまいと、朝に見、夕べに見、密かに覚悟をきめていた。