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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

06 第六分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页

青空文庫

われらの方の者どもは、かくの通り気ままに頂戴しておるゆえ」

「やあ、お心入れな」

と家来思いな秀治は、自分がすすめられたより欣んで、さて城方の一同へ向い、

「飲め飲め。せっかく、ああ仰せられるものを、辞儀固くして、戴かぬはかえって無礼に似る。――飲めぬ者は箸なと取れ」

と、いった。

黙然と、城方の面々は、かしらを少し下げた。それからおもむろに箸を上げ、杯を手にし始めた。努めてがっつかないように。

会見の最初からの約束で、今日の一会は、いわゆる厳めしい談判ではなく、勝敗優劣の念も去って、酒間の談笑のうちに、和そうと思えば結び、非と考えたら別れよう――そういう条件のもとに敵味方一座したものであるから、光秀と秀治とは、この辺からぼつぼつその話に触れているような容子であった。

至極、武人肌でまた磊落な波多野秀治は、光秀のものやわらかさや、驕慢のふうもなく、心から接待してくれる態度に、すっかり感激してしまったらしく、

「爾後のおあつかいは、御身にまかせる。ただ城中の者の生命と、その後の扶持だに保証して賜るなら」

と、無血開城の大事を、ほとんど一諾にひとしいことばをもって、光秀にこたえているのだった。