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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

06 第六分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页

青空文庫

そんな関係もあるところからすすんで、

「身にかえても」

と、その衝にあたることをひきうけた。

勅命を奏請して、まず、

「事なきように」

と、本願寺側を諭した。

けれど十一年のあいだ、全門徒の血と信仰をもって、信長に抗し、ここに拠って来た本願寺としては、いまいかに恃む味方を諸所に失ったからといって、

「では」

と、すぐ大坂から地方へ後退することも為し難かった。

新門跡の教如は、強硬派の随一である。父の顕如が、

「――この上は」

と、大坂退去の意を発表すると、彼は彼でまた、

「われらは、一寸たりと、当石山御堂は退きませぬ。たとえ父君以下、門徒ことごとくこの地をお去りあろうとも」

と、号して、さらに防塁を築き、同心を語らい、廻文を飛ばしなどして、

「信長と最後の一戦せん」

と、激気いやが上にも、昂いものがあった。

けれど、大坂を退くべし、との通達は、もう一近衛前久の調停ではなく、すでに、朝廷からのお心遣いであった。勅命であった。

去ル程ニ、大坂退城仕ルベキノ旨、辱クモ禁中ヨリ御勅使降サレ、門跡、北之方、年寄共如何アルベキヤ否ヤノ儀、権門ヲ恐レズ、心中之存ジ寄ノ旨趣、残ラズ申シ出ヅベキノ由尋ネ被申――