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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
06 第六分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页
八月の一夜である。
瀕死の城兵に、糧を入れるため、毛利方では、運送船五隻に、兵船十隻をもって護衛にあたらせ、海上から決死の覚悟で、賀露川を溯って来たのであった。
「来たな」
と、河口の警備隊は、これを繋ぎ狼煙で、沿岸の味方へ報らせた。
夜半だったが、封鎖陣には、一尾の魚も通さないほどな手配りがととのっていた。
羽柴秀長、藤堂高虎、細川藤孝の援軍などが、一丸になって、河中の船団をつつみ、小舟から投げ柴投げ松明などで、彼の主船を焼き沈め、乗員三百余人の毛利兵を殲滅してしまった上、その主将鹿野元忠の首をあげて、城中へ、
「各※(二の字点、1-2-22)が、鶴首してお待ちかねのものも、かくの通り」
と、送りつけた。
七月中でさえ、鳥取城のうちには、もはや一粒の糧もなく、兵のうちにも、避難民の中にも、餓死や病者がふえていたところである。――もうそれに怒って反抗する気力も乏しかった。
羽柴秀長は、藤堂高虎に諮って、もう敵方も参ったであろうと、能弁な一臣下を、使いとして、敵の一拠点、丸山の陣へ、
「はや、降伏せられよ」
と、説きにやったが、その使いは帰って来なかった。