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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

06 第六分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页

青空文庫

養父でもあり、中国総督でもある彼だが、秀吉は凱旋将軍をむかえるの礼をもって、わが子を待った。

そして、座に請じ、肩を撫でて、

「よういたして来た。どうだ戦というものは、おもしろいものだろうが。敵に勝つとは、こうするものかということが、わかったであろう」

と、いった。

彼はまた、この歓びを、ひとりで陶酔している気はない。もうひとり自分以上に歓んでもらいたい人がある。いや、自分の満足感はさて措いて、その人のために、この歓びごとを、構成したのではないかとさえ思われぬこともない。

「於次が初陣の勲功をお聞きあられたなら、右大臣家におかれてもいかばかりか、お歓びあろうぞ。さっそく、安土へ使いを立ててお報らせ申そう」

浅野弥兵衛をして、その使者にえらび、即日、手書を持たせて、安土へやった。もちろん右府信長へ宛ててである。

書簡の内容をくだいていえば、秀吉の口吻のまま、こんな意味がしたためてあった。

はやいものです。於次も十四歳になりました。老母も愚妻の寧子も、日ごろは、眼のなかへも入れたいほど可愛がって、長浜の奥から外へも出しませんが、かくては行く末大器となる質を可惜盲愛のため親が弱めてしまうようなものですから、このたび中国の役を幸い、陣中へ招いて、つぶさに戦陣の悲雨惨風を味わわせ、約一年を過させました。