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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
06 第六分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页
目をかけておるうちに、わたくしに縋って茶を学びたいという。職人が学んでどうするというと、茶道具をつくるからには、茶の心がなくては、良い器はできぬからという。師匠の曾呂利もともに、この男には、何か知れぬが、おもしろいところがある。すこし置いて、庭掃除でも雑巾がけでもさせてみて下さいとしきりに頼む。……ま、そういった次第でかれこれ三年ほど側においてみましたが、至極、心得がよく、やがて一かどの茶人にはなれようかと楽しんでいるわけです」
「そうですか。それを聞いて、何やらこの筑前までが、ほっと安心いたした。中村にいた頃からの幼友達ですからな。いつも思い出すごとに、幸せを祈っていたものです」
「では、お庭先へなと、呼んでみましょうか。会ってやって下さるか」
「これへ来ておるので」
「供に連れて来て、何かと、掃除の手伝いなどさせておりました」
亭主の信長はさき程から、客のはなしの穂を折らぬようにと、控えめに口をつぐんでいたが、ふと、笑いだして秀吉へ、
「思い出した。その於福とやらのことで思い出した。筑前がさい前、得意になって話された大明の知識は、於福が幼少のとき、父の茶わん屋捨次郎から聞いたはなしの又聞きではないかの。