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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
06 第六分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页
なかなか見るも清々しいすがただった。
こういう者もあるし、また福島市松なども、この三木城攻めには、別所随一の剛勇と聞えた末石弥太郎を討って、秀吉の感賞にあずかっている。
もっとも、市松もまだ弱冠、尋常では討てるわけの相手ではない。その日、末石弥太郎が傷を負って三木川の草むらに、水を掬って休んでいたのを、いきなり屈み寄って、
「市松だッ、羽柴の家来、福島ッ――市松ッ」
と、早口に名のりかけながら不意に突きかけたものである。
名乗――と、ひと口にいうが、一度や二度の合戦をふんだくらいでは、しかも相手が相当な敵と知る場合など、思いのまま名乗声の揚げられるものではない。
せつなに、口も渇き、舌の根ももつれ、なにをさけんだか、あとでは自分でもわからない――というのが、後々、一騎当千なつわものと呼ばれるようになった人々にしても、正直に述懐するところである。
この時、市松は、一度敵の末石弥太郎に襟がみをつかまれて、すでに首を呈するところだったが、彼の郎党、星野なにがしという者が、そこをまた後ろから滅多斬りして、主従ふたりがかりでようやく弥太郎の首級を獲たのであった。