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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
06 第六分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页
官兵衛の使いした十一月の末から十二月に通じて、三木の城は、実に、寂莫としたものをひそめて、沈黙していた。もう寄手に撃つべき鉄砲の弾すらないことは読めていた。けれど秀吉も今は、
「おそらく、城の余命も長くはあるまい」
とみて、無下な強襲も抑えていた。
単に、こうして、根競べというだけならば、秀吉のいまの立場は、決して困難とも逆境ともいえないが――この平井山の陣営も彼の立場も、決して、秀吉一箇の独立した戦いではなく――要するに信長の制覇に対抗する西、南、東、北の敵性連環の一角にぶつかって、その包囲環に撃破の穴をあけようとしている信長自体の、手脚の一つである秀吉に過ぎないのだ。従って、その主体たる信長の感情は、
(なにを、無為無策に)
と、前線の長陣を、焦々思っているかも知れないし、また日頃、秀吉にこころよからぬ周囲の者どもも、
(筑前どのには、始めから荷の勝つ大役)
とか、
(このまま、彼一手に、お任せおきあっては)
とか、さまざまな誹謗も行われていることは、疑いもないことだった。――その証拠には、やれ、秀吉は土着民の人気取りばかりやって、無用な軍用金を冗費しているとか、陣中の将士の反感をおそれて、飲酒の禁も厳格でないとか、何とかかとか、信長へ聞えてゆくほどな問題でもない些事がいちいち中央に聞えて行って、それが微妙