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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

05 第五分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 页

青空文庫

石田佐吉

大膳の子にならんか」

「養子などに参る気はございません。真っ平です」

「養子とて、軽んずるな。この秀吉も、養子じゃが」

「でも、いやです」

「あははは。あの通りだ。大膳なんといたすか」

「いたしかたありません。あきらめましょう。しかし清々しゅうござる。よいお小姓、よいお小姓」

大膳はしきりに彼を眺めたり賞めたりしながら、秀吉の杯をいただいていた。いい機嫌に酔っていた。

石田佐吉

木村大膳が吹聴したものとみえる。虎之助の沈着と胆気は城内でも評判になった。いや城下の街ではそれ以上のうわさだという。

「於虎、そちも故郷の母へ、便りなど書いてよろこばしてやれ。この後は、百七十石に加増してくれるぞ」

秀吉からも、そういわれた。

かれの得意は思うべしであった。いよいよ勉強し奉公に励んでいた。けれど納まらないのは、同じ年頃の生意気ざかりが同室している小姓部屋の誰彼である。

ここでは、福島市松が年上で、また一番の古顔として、その下に平野権平だの、片桐助作だの、加藤孫六、脇坂甚内、糟屋助右衛門などという大供小供が、非番でさえあれば、ひとつ池の蛙みたいにがやがや躁いでいた。

「於虎、於虎」