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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

05 第五分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 页

青空文庫

「そちは僧になるつもりで、寺入りしておるのか」

「いいえ」

首を振った。

ニコとしたまま黙っている。

その笑靨までが、知性の光に見える。秀吉は、ふいに、

「住持はおるか」

と、訊ね、佐吉が、おりますと答えると、これへ呼べといった。

佐吉は、はいと、素直に返辞して立ちかけたが、

「ただいま御家来衆から、お湯漬をさしあげいとのおことばで、住職も厨にはいって立ち働いておりまする。ほかならぬ御城主への御膳、人手にまかせられぬと、先ほども仰っしゃって、取り急いでおるところでございますが……お召しはおいそぎでございましょうか」

「ああそうか。ならば後でもよろしい」

「いずれ、お膳ができ次第、ごあいさつに参られましょう」

佐吉は天目を下げて行った。

秀吉はすっかり気に入ってしまった。彼の小姓部屋に、野育ちの芋の子や茄子みたいなのが多いのは、彼自身、百姓の子であったので、意識して、山野の不遇な児を取り立てて来たためであったが――近頃つらつら考えてみるのに、野性と野性ばかり配していたのでは、いつまでも野性を脱しないのみか、野性のいいところも磨かれて来ない。

脆弱な文化や、爛熟しすぎた知性には、逞しい野性を配することが、本来の生命力を復活するひとつの方法だし、また、余りに粗野で豪放にすぎる野性にたいしては、これに知徳の光をそそぐこと