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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

05 第五分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 页

青空文庫

信長は、彼にも理由のあることかも知れぬと、北陸陣の諸将が帰るのを待ってから裁くつもりでいたが、

「柴田どのの御立腹はひと通りではない」

とか、

「筑前どのも、ちと短気だ。陣中から引き揚げてしまうなどは。……あれでは、大将たるものの顔も立つまい」

などという風聞もしきりに聞えて来るので、

「事実、筑前は、長浜へ帰っておるのか」

と、侍臣をして調べさせたところ、

「されば至極、洒然として、長浜においでの由でございます」

と、いうことだった。

信長は、逆鱗して、

「不届きな振舞い、ともあれ、謹慎申しつけい」

と、厳重な使者をやった。

やがて、帰って来た使者に、

「秀吉は、どんな顔しておったか、予の問責を聞いて」

「ははあ……というような顔しておりました」

「それだけか」

「当分、静養か、とつぶやいておりました」

「不敵なやつ。増長しおる」

最高な辞をもって、罵りながら、信長の眉には、まだ少しも、秀吉を真から憎んでいるような色は出ていなかった。

けれど。

やがて、勝家以下、北征の諸将も帰って来た頃、彼も、ほんとに怒った。

さきに、幽閉を申しつけてあるのに、その秀吉は、長浜城にあって、謹慎どころか、日夜、飲酒高会し、或る夜のごときは、大湖にのぞむ大広間をあけひろげ、千燭を燦かして、小姓たちには金扇銀扇をもたせて舞い競わせ、自分も鼓