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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

05 第五分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 页

青空文庫

滝川一益、丹羽長秀、明智光秀――そして筒井順慶などの援軍およそ二万が、京都を発して播州へ着いたのは、もう五月の初めだった。

信長は、さらに、子の信忠を、そのあとから加勢にやった。

一方、秀吉は、援軍の先発として来た荒木村重の隊を待って、本軍に加え、総勢、上月城の東――高倉山へ陣を移していた。

だが。

ここに臨んで、上月城の位置を見直すと、その城中と聯絡をとることは、ほとんど至難に思われた。

城の山麓は、市川の本流と支流とが三方を繞っている。しかも、西北も西南も、狼山や太平山の嶮に囲まれ、近寄る術はないのである。

ただ、一すじの通路はある。しかしそこには毛利の大軍が充満していた。そのほか、河を擁し、谷を利用し、山を負い、いたるところ、敵の要塞と、敵の旗でないところはない。

天嶮の城というものも、これを死守する場合はいいが、こうなると、外部の味方の後詰が、それと相結ぼうとするには、却って、厄介な位置にあった。

「これは、どうもならん」

秀吉は、嘆声を発した。

まるで無策な大将であることを自分で告白するように、

「手が出せぬ!」

と、二度もいった。

およそ戦というものは、直感らしい。