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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

05 第五分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 页

青空文庫

誓紙

信長の性情に見る特質である。彼はまた朱印をもって、秀吉を播州の探題に封じた。

平井山の長陣は、依然難攻の三木城を包囲したまま、膠着状態にあったけれど、こうして、裏面の外交工作は着々功を奏していたのである。

だがさすが大藩だけに、宇喜多家との交渉は黒田官兵衛の辣腕をもって必死に働きかけても、まだ容易に、成功を見るには至らなかった。

備前、美作の二州を擁して信長勢力と毛利圏内との、ちょうど中間にある山陽の宇喜多家は、或る意味での中国の将来は、その向背によって定まるといっても過言ではないのである。

その宇喜多家には、由来、和泉守直家を輔佐している四家老というものがある。――長船紀伊守、戸川肥後守、岡越前守、花房助兵衛の四老である。

このうちの花房助兵衛は、黒田官兵衛と一脈相通じるものをもっていた。

官兵衛は、説客として、まず彼の門をたたき、徹宵、天下を談じ、風雲の将来を卜し、また武士の心胸をひらいて、

「およそ、眼さきも見えず、勝つか負けるか、確信もなく、ただやみくもに、武名武名、と強張って滅亡の戦をするほど、愚なる沙汰はござらぬ。主家のためにも、百姓のためにもならず、大きくは、泰平の招来を遅くするだけのもので、弓矢の本義とは、決してそんなものではないはずでおざろう」