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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

05 第五分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 页

青空文庫

「――休息に」

という触れこみであったが、単に中食をとるためではなかった。

ここの寺中に、ぜひ会いたい者がいる。秀吉は、上洛の都度、彼と会うことを、恋人を見るが如く楽しみとしていた。

それは寺内の一庵で、静かに病をやしなっている自分の部下、――竹中半兵衛を見舞うことであった。

寺僧は、突然の大賓を客院に迎えて、饗応にうろたえた。

秀吉は、一僧をとらえて無造作に、

「家来どもはみな、食事の行李を携えておれば、湯茶のほか、お気づかいには及ばぬ。――また自分は、当寺に療養中の半兵衛重治をちょっと見舞いに立ち寄ったのみにござれば、酒茶のもてなしなど無用。半兵衛と用談の後に、湯漬など馳走になればありがたいが」

と、平常の待遇を断わってから、またこう訊ねた。

「ときに、病人の容体は、こちらへ来てから、どんな容子であるか」

僧は、憂わしげに、それへ答えて、

「大して、お変りもないようにございますが、さりとて、はかばかしい御快気もお見うけいたされません」

「医薬は」

「朝夕に……」

「医家も見えておろうな」

「はい。京の名医も、また、信長様からお見舞いの御医師も、しばしばお越しなされました」