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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
05 第五分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 页
有情・無情
「私は、髪を剃って、余生は神につかえたいと思います」
右近は訴えたが、信長は、
「ばかを申せ、その若さで」
と、ゆるさなかった。
結果は、信長の希望どおりに行ったが、またオルガンチノの見込みどおりでもあった。右近の進退、質子の取り戻し法、すべてこの伴天連の神算だったのである。
有情・無情
きのうの情勢は、もう今日の情勢として考えられない。
時は刻々に変貌を作業している。
去就に迷うのもむりはない。野望を過って身を亡ぼす者が簇出する理由もある。
十一月もはや末だ。荒木村重の片腕とも恃まれていた中川清秀は、突然城を出て信長へ帰伏してしまった。茨木城は開城されたのである。
「天下大事の秋。小過は咎めぬ」
信長は、罪を問わないのみか、降将清秀に、黄金三十枚を。随いて来た家臣三名へも、黄金や衣服などを与えた。
高山右近の誘降によるものであった。右近も功として、太刀や馬を拝領した。
「稀有な御寛大だ――」
どうして彼らをそれほどまで優待するのか、幕将以下の下級将士ほど、信長の処置をいぶかった。
信長も、心のうちでは、
「さだめし、部下のうちには、不平もあろう」
と察しながら、戦争目的の完遂のためには、こうするしかなかったのである。