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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
徳田秋声『日本の文学 9 徳田秋声(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:新世帯、足迹、黴、爛。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 页
十七
主婦は眠そうな母親の顔に、すぐに目をつけた。
「この油の高いに、今までかんかん火をつけて、そこに何をしていただえ。」
主婦は褄楊枝を啣えながら大声にたしなめた。
「私が石油くらいは買うで……。」と、母親は言い返した。
主婦の声はだんだん荒くなった。母親も寝所へ入るまで理窟を言った。
暗いところで小父の脱棄てを畳んでいながら、二人の言合いをおそろしくも浅ましくも思ったお庄は、終いに突っ伏して笑い出した。
十七
お庄はごちゃごちゃした日暮れの巷で、末の弟を見ていた。弟はもう大分口が利けるようになっていた。うっちゃらかされつけているので、家のなかでも、朝から晩までころころ独りで遊んでいた。
「どうせもうそんなにたくさんはいらないで、この子を早く手放しておしまいやれと言うに――。」と、主婦は気を苛立たせたが、母親は思い断って余所へくれる気にもなれなかった。
弟は大勢の子供の群れている方へ、ちょこちょこと走って行った。しまっておいた簾が、また井戸端で洗われるような時節で、裾をまくっておいても、お尻の寒いようなことはなかった。お庄は薄暗くなった溝際にしゃがんで、海酸漿を鳴らしていた。