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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

徳田秋声『日本の文学 9 徳田秋声(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:新世帯、足迹、黴、爛。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 页

青空文庫

四十四

お庄も傍で目を曇ませながら、擽ッたいような気がした。

四十四

「私は、それじゃお庄さんに後をお願い申して、ちょっと髪を結いに帰って来ますわね。」と、洒落ものの母親は、来た晩から気にしていた小さい丸髷を撫でながら言い出した。二、三日側についていると、母子の間にもう大分話の種がなくなってしまった。来ると早々窮屈な病室の寝台などに臥かされて、まだろくろく帯を釈いて汽車の疲労を休めることすら出来なかった。

牛乳とスープだけで活きている叔母が時々、「ああ、おいしいおこうこでお茶漬が食べたいね。」と唸ると、老婦は傍からもどかしがって、看護婦に尋ねてみたが、看護婦やお庄は笑っていて取り合わなかった。

「院長さんに伺ってみましょう。」看護婦はその場のがれに言って出て行った。

「それでも、ちっとは何か食べさすものの工夫がつきそうなものだね。」と、母親は隅の方で、お庄が運び込んで来ておいた、細かいかき餅の鑵を見つけて振って見たり、籠のなかの林檎を取り出して眺めたりした。そして口淋しくなると、自分でポリポリ摘んで食べては、お庄に田舎の嫁の話などをして聞かせた。その嫁の荷のたくさんあることが母親の自慢であった。