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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

徳田秋声『日本の文学 9 徳田秋声(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:新世帯、足迹、黴、爛。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 页

青空文庫

「君の目にゃ何と見える。」小野はニヤニヤ笑いながら、悪こすそうな目容をした。

「解んねえな。どうせ素人じゃあるめえ。莫迦に意気な風だぜ、と言って、芸者にしちゃどこか渋皮の剥けねえところもあるし……。」

「そんな代物じゃねえ。」と小野は目を逸して笑った。

小野は相変らず綺麗な姿をしていた。何やらボトボトした新織りの小袖に、コックリした茶博多の帯を締めて、純金の指環など光らせていた。持物も取り替え引き替え、気取った物を持っていた。このごろどこそこに、こういう金時計の出物があるから買わないかとか、格安な莨入れの渋い奴があるから取っておけとか、よくそういう話を新吉に持ち込んでくる。

「私なんぞは、そんなものを持って来たって駄目さ。気楽な隠居の身分にでもなったら願いましょうよ。」と言って新吉は相手にならなかった。

「だが君はいいね。そうやって年中常綺羅でもって、それに内儀さんは綺麗だし……。」と新吉は脂ッぽい煙管をむやみに火鉢の縁で敲いて、「私なんざ惨めなもんだ。まったく失敗しちゃった。」とそれからお作のことを零し始める。

「その後どうしてるんだい。」と小野はジロリと新吉の顔を見た。