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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
道家と竹腰は思わず地べたにつッぷした。
「は」
「は」
「しかし、竹腰には縁がない、道家一人が来るがよかろう」
「は」
「は」
二人は暫くつッぷしていたが、それっきり老人の声がしないので、顔をあげてみるともうその姿はなかった。
竹腰と道家はそこから己の隠れ家に帰って、不思議な老人に教えられた時機の来るのを待っていた。二人はその間の生計に野へ出て獣を狩っていた。
その日も二人は弓を持って朝から出て、広い野の中をあちらこちらとあさっていたが、夕方、一匹の鹿を見つけたので、それを追っかけて往ったが、そのうちに鹿は逃げてしまって、どこへ往ったのか判らなくなった。
気が注いてみると道家は己一人になっていて、竹腰の姿は見えなかった。彼はもと来た径と思われる林の下を引返して、
「竹腰殿、竹腰殿」
と、声をあげて呼んでみたが、林の枝葉を吹く風の音ばかりで人声はしなかった。そして、幾等呼んでも返事がないので、隠れ家へ帰ろうと思って呼ぶことをよして歩いた。
林の下は暗かった。道家は早く林の下を出ようと思って歩いたが、朽ち落ちた下枝が重なっていて足をとるので早くは歩けなかった。