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あんこくせい

暗黒星

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页

青空文庫

夢というものは、ばかにできませんよ」

一郎への助太刀のように、一同のうしろから、不明瞭なしゃがれ声が聞こえてきた。そこの椅子に、からだを二つに折ったようにして腰かけている祖母の声であった。まっ白になった髪をオールバックのように撫でつけた下に、歯がなくなっているのに、なぜか入歯をしていないので、ひどく平べったく見える皺くちゃの顔があった。細い眼で老眼鏡の上から上眼使いをしながら、歯のない口をモグモグさせて物を言う様子は、何か不思議な鳥類のように見えた。おそらく七十歳をくだらぬ老年である。

「ああ、お祖母さまはわかってくれますね。僕その同じ夢を三晩もつづけて見たのです。どこだかわからない、地の下のほら穴のようなまっ暗な所なのです。そこに僕が坐っているのです。僕は石の像になって坐っているのです。石で造った像ですから、血も通わなければ、呼吸もしないのです。そのくせ、眼だけはハッキリ見えているのです。

そのまっ暗闇の空の方から、まるで紐でも吊り下げられでもするように、まっ逆さまになったはだかの人の姿がスーッと下へ降りてくるのです。闇の中に、その人の姿だけが、まっ白に浮き上がって、恐ろしいほどハッキリ見えるのです。