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あんこくせい

暗黒星

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页

青空文庫

北森課長と明智とは、二人の枕元に腰かけて、からだにさわらぬ程度に、要点だけを質問して行った。

その結果判明したところによると、先ず綾子さんの方は、あの怪青年荒川正太郎変死事件のあった日、すなわち綾子さんが家出をしたと信じられている日以来、例の覆面の怪物のために、あの地下室に押しこめられ、きのうまではただ手足を縛られ、猿ぐつわをはめられて、逃亡の自由を奪われていたばかりであったが、ゆうべ、伊志田氏が同じ穴蔵へ連れ込まれると同時に、あの恐ろしい磔刑の姿で、壁に縛りつけられたというのである。

一週間の監禁中、ゆうべまでは、一日二度ぐらいずつ、覆面の怪物自身で、パンと飲み物を運んでくれ、その都度、猿ぐつわをはずして手の縄をといてくれたので、飢渇に耐えぬというほどではなかった。それよりも、一体この先どんな恐ろしい目に遭わされるのかと思うと、食事どころではなく、まったく生きた空はなかったという。

父の伊志田氏の方は、ゆうべ、まったく知らぬまに、地下室へつれこまれ、ふと気がつくと、いつの間にか磔刑の形で壁に縛られていた。おそらく犯人が何かの飲み物の中に麻酔薬を混ぜておいたものであろう。