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あんこくせい

暗黒星

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页

青空文庫

もう一度ほんとうに眼をえぐりたいのだ。心臓を刺して息の根を止めたいのだ。

孤独を愛する奇人伊志田氏も、この恐怖には抗しかねたとみえ、邸内には俄かに屈強な書生の数がふえた。一人であった書生が五人に増した。腕に覚えの猛者どもが、狩り集められたのだ。その中には北森課長が推薦した刑事上がりの壮年者も二人までまじっていた。

三日間が何事もなく経過した。さすがに怪物も厳重な警戒におびえたのか、ついに姿を現わさなかった。その四日目の夜のことである。一郎青年の病室にはただ一人、ロイド眼がねと三角に刈り込んだ顎ひげの目立つ医師が、負傷者の見とりをしていた。

「ウフフフフ、どう考えてもおかしいですよ。僕はまさかあなたにこんな看病をしていただこうとは、夢にも思いませんでした」

ベッドに横たわった一郎青年は、傷の経過もわるくないと見えて、元気な様子でクスクス笑いながら、ロイド目がねの医師を見上げるのであった。

「僕だって、こんなまねははじめてだよ。変装というようなことは好きじゃないのだが、君があんなに頼むものだからつい負けてしまったんだよ」

医師もにこやかに笑って、青年の美しい顔を覗きこむようにした。