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あんこくせい
暗黒星
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页
それから三日のあいだは、別段のこともなく過ぎ去った。綾子はあれ以来、自室にこもって神妙にしているし、塔の窓に怪しい光りもののするようなことも起こらなかった。
一郎の胸の傷も案外経過がよく、二、三日もすれば繃帯が取れるほど肉が上がっていた。眼の下の傷はほとんど快癒して、鬱陶しい顔の繃帯はすでに取り去っていた。
もう看病の必要もなく、明智の有本医師は、この上伊志田邸に泊まり込んでいる口実がないほどであったが、しかし、探偵としての職務は終ったわけでなく、一日でも永く邸内にとどまっていたかったし、それに一郎がしきりに引きとめるので、つい滞在を延ばしているのであった。
さて、黒覆面の怪物の殺人未遂事件があってから七日目の夜のことであった。伊志田家の人は、緊張に慣れて、いくらか高をくくるような気持になっていた。五人に増した書生のうち、二人までが家庭の都合で暇を取って、七日目には、元からいた書生を合わせて三人しか残っていなかったが、人々はさして心細がるようなこともなく、主人の伊志田氏などは、騒ぎのために延ばしていた用件を果たすために、午後から外出して、夜がふけても帰らなかった。