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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

何んな御試験でございましょう?」

「それは前もって分りません。その時勝負でございます。この間お断りしたお医者さまのお方も、考えて見ると詰らないことで失策りました。床の間に鴨を籠に詰めた絵が掛けてありましたのを、その方が褒めたのでございます」

「褒めてはお悪いんでございますか?」

「いゝえ。主人は絵の好い悪いなんか分りませんけれど、親戚の画家から戴いたばかりでしたから、箱書を覚えていて、『これは雁鴨青籠詰めの図ですよ』と申しました」

「籠詰めの鴨と申しますと、年末の御贈答に使うあれでございますか?」

「はあ。あれを描いて戴いたのでございます。その医学士の方は雁鴨と仰有った後が巧く続きません。雁鴨青籠詰めの図と主人が又申しました。これは私も余程落ちついてかゝりませんと舌が廻り兼ねます」

「ガンカモアオガモ……」

「奥さまにして然りでございましょう?」

「あらまあ!」

と大谷夫人はお達者なのを窘められた形だった。

「その方は何うしても正確に仰有れなかったのでございます。そこで、あの男は呂律が廻らないから少し足りないのだろうということになりました」

「まあ/\、お可哀そうに」