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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

「まだ二十五分あります」

「今日は屹度佳子さんが御同席でございましょう」

「はあ。それを考えると、もう胸がドキ/\します」

「そんな気の弱いことじゃ駄目よ」

「何ういうものでしょうかね? 道で会っても然うです。遠くから見かけて、あゝ、佳子さんだなと思うと、もう胸が乱調子になって、早鐘を打つんです」

「それじゃお貰いになった後が大変ですわね。始終なら心臓が弱ってしまいましょう」

「その時はその時で、強心剤を持薬に飲みます」

「まあ」

「ハッハヽヽ」

「贔屓目もありましょうけれど、あなたが一番有望よ。風采といい態度といい」

「それは始終見慣れていらっしゃるからですよ。風采では吉川君に敵いません。態度の落ちついているのは瀬戸君です」

「何方も侮り難い強敵には相違ありませんが、本当のところはあなたよ。お二人とも要領が好いから、実力以上に見えるんですわ」

「僕は以下に見える性分です。第一、口が重いです」

「それほどでもありませんわ。随分おやりになるじゃございませんか?」

「北海道は損ですよ。瀬戸君だって郷里は土佐ですけれど、東京生れですから、矢張り何処となく軽いです。僕は何うしても東北人の重っ苦しいところが抜け切れません」