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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

今日初耳とは大谷夫人も迂濶だと思った。言葉の途切れたところへ、小宮君が現れた。

「失敬々々」

「やあ」

「一寸若主人の見識を示したところだ」

「何うして?」

「かなり待たせたろう? もっと待たせてやろうかと思ったが、未だ修業が積んでいないから、急いで上って来てしまった」

と小宮君は冗談を言った。

「あら、濡れていますわ」

と若子さんがハンカチを出して、額の辺を拭いてやる。安達君、見せつけられるのは覚悟の前だった。

「拵えが悉皆若旦那らしくなったよ。昔日の面影なしだ」

「然うかね? 自分でも努力しているんだ」

「僕達とは違う」

「この着物も若子さんのお見立てだ。一寸渋い好みだろう?」

「僕には分らないけれど、もう悉皆板についているようだ」

と安達君は調子を合せた。

「何を着せても似合いませんのよ。あら、下前が下っていますわ」

と若子さんは屈んで、グイッと上前を引いた。小宮君は奴凧の形になって、よろける真似をした。馬鹿々々しくて見ていられないけれど、今更仕方がない。

安達君は若子さんが退出すると直ぐに用談に移った。

「瀬戸君自身から聞いたんじゃないんだってね?」

「うむ。吉川君が来て話したんだよ。