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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

一気呵成の足掻き

学問才気共に兄貴分の土佐犬は怖かったけれど、北海道の馬は元来甘く見ている。ポッと出だから、出し抜き好い。スタートを切る時の先手が未だに利いている。現に奇襲訪問も自分の方が先に受けた。そればかりでない。佳子さんの活動写真を写して、その封切りを見に来て貰った。あれは思いつきだった。一回の訪問を二回に延長したのだから、頭が働いている。馬には一寸出来ない芸当だ。

「吉川さん、今晩お伺いしたこと、安達さんには内証よ」

と佳子さんが言ってくれた。家へ送り届ける途すがらだった。都合の好い時は何処までも都合が好い。一緒に映っている令弟の弼君は丁度試験最中で来られなかったのである。

「無論黙っていますが、何故ですか?」

「不公平になりますから」

「しかし先方は御一緒に銀ブラの光栄を荷っていますよ」

「あんなこと、勘定に入りませんわ、安達さんの訪問日ですもの」

「それじゃ僕の訪問日にも応接間を銀座まで延長して戴けませんか? 一遍で結構ですから」

「お安い御用よ。弼にねだらせますわ」

「はゝあ。すると安達君の時も弼君を御利用になったんですか?」

「違いますわ。あれは偶然よ」

「二人丈けじゃいけませんか?」