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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

「ふうむ」

「閣下も土佐人だ。憤ったぜ。土佐節なら、武士に通じるけれど、犬とは何だ? 君はこんなことを言われて黙っているのかって、叱られてしまった」

「僕は黙っていて宜かったな」

「何だい? 同感だったのかい?」

「いや、兎に角、君にいられると敵わないと思っていたから寛いだのさ。しかし友人の失脚を喜ぶようじゃ情けないとツク/″\思った」

「それが君の好いところだ。しかし僕のは失脚じゃない。中将令嬢から大将令嬢へ転向したんだ」

「僕は溝淵閣下から橋本閣下へ推薦して貰えるのかい?」

「そんな形式は取らない。溝淵閣下は橋本閣下から恨まれているんだから、釈明は後からのことにして、手っ取り早く毒瓦斯を使うんだろう」

「毒瓦斯?」

「鈍いぞ。要するに、吉川君を追い退けて、君丈けを戦場に残す仕掛けさ。陸軍の人だから、その辺は種々と作戦があるんだ」

と目先の見える筈の瀬戸君はこの毒瓦斯政略に美事かゝっていながら気がつかない。

「成程。しかし気の毒だな、些っと」

「吉川君にかい?」

「うむ」

「それじゃこのまゝにして取られてしまい給え」

「厭だよ、それは」

「策は何をやっても差支ない約束だった」