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きゅうこんさんじゅうし
求婚三銃士
佐々木 邦
「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页
土佐犬、貴様は日曜に探りに来たんだ。いや、既に画策して置いて、様子を見に来たんだ。畜生! というような激越な文句に満ちていた。両方の縁談を瀬戸君が壊したと理解したのだった。
佳子さんは秋からの交際で、才走った吉川君よりも真面目一式の安達君の方へ傾かざるを得なかった。吉川君が十のものを二十三十にも見せたがるに対して、安達君は自分の値打を実際よりも低く見積っている。従って吉川君には随分嘘があった。安達君は大きな看板をかけない代りに、佳子さんを失望させたことがなかった。橋本閣下夫婦にしても、黙って見ていたが、安達君の純真を愛した。令弟の弼君に至っては、徹底的に安達君が贔負だった。然ういう形勢のところへ爆弾が投下されたから、吉川君は一も二もなく破滅して、安達君の独り舞台になったのである。而も安達君は差当り自分の優勢に気がつかない。大谷夫人が若子さんに悪いことを頼んだと思って、責任を感じている。
「安達さん」
と佳子さんが少時途絶えた話の後を呼びかけた。
「はあ」
「あなたはこれから一週間ぐらい往来をお歩きになる時、余程気をつけて下さらないと困りますよ」
「何故ですか?」