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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

「瀬戸の件です」

「成程、この前も瀬戸君の件でした。しかしあのお話なら、精神異状の傾向があるという御注意でしたから、私の方からお礼を申上げなければなりません」

「いや、然う仰有られると、穴へでも入りたいような心持になります。実はその後縁がありまして、瀬戸を私の娘の婿に貰うことになりました」

「はゝあ? それは又何ういう次第ですか?」

「血統に精神異状の傾向があるように申上げましたが、あれは真赤な嘘でした。仲人を引受けて面倒を見ている中にナカ/\出来の好い男ということが分りましたし、同郷のもので素性がよく知れていますから、人手に渡すよりも自分の娘にという不料簡を起して、つい策を弄しました」

「はゝあ」

「全く相済まぬことですが、娘の可愛いさはお互ですから、後日申上げれば、閣下も快く諒として下さると思いまして……」

と溝淵閣下は瀬戸君に手を引かせた細工まで告白した。

「驚きましたな、これは。今となっては私の方も申分ない婿を得ていますから、苦情は申しませんけれど、閣下も随分横着でいらっしゃいますな」

「重々恐れ入ります」

「自分が揃えたものから一番目ぼしいのを掻っ払われて、快く諒とする人間は滅多にありませんよ。