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きゅうこんさんじゅうし
求婚三銃士
佐々木 邦
「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页
何頭いるだろうと勘定して見たが、迚も及ばない。奥の方に一町ぐらい続いている。恐ろしく長いエレベーターだと思った刹那、安達君は鼾をかき始めた。
翌朝、両親から返事が着いた。大谷夫婦が勧めるくらいの縁談なら異議なし、御夫婦へも改めて御依頼申上げたというのだった。大谷さんは、奥さんが見込を力説したから一肌脱ぐことになっていた。むずかしい人だけれど、奥さんの言うこと丈けはよく聴く。
「奥さん、今日早速何うぞ」
と安達君は出勤の折、玄関で念を押した。
「心得ました」
「一万五千円ぐらい分けて貰えると仰有って下さい。これは是非お忘れにならないように」
「大丈夫よ。もう悉皆考えてありますから」
「馬は吉兆でしょうか?」
「はあ?」
「馬です。昨夜馬の夢を見たんです。三越のエレベーターの中に一町も続いていました」
「まあ/\」
「夢って変なものですな。それが如何にも現実らしくて、不思議でないんです。目が覚めてから馬鹿々々しいと思いましたが、その時は感心していました」
「あなたはこの頃頭が少し何うかしていらっしゃるんじゃありませんの?」
「然うかも知れません」
「直ぐ側の電車や自動車が一町も先に見えたりすると大事でございますよ」