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あさくさふどき

浅草風土記

久保田 万太郎

雷門以北「東京日日新聞 夕刊」1927(昭和2)年6月30日~7月16日<br>吉原付近「中央公論」1929(昭和4)年2月<br>続吉原付近「中央公論」1929(昭和4)年3月<br>隅田川両岸「中央公論」1935(昭和10)年9月<br>浅草田原町「三田文學」1912(明治45)年2月<br>あやめ団子「花形」1920(大正9)年8月<br>相模屋の路次・浅倉屋の路次「新演藝」1920(大正9)年8月<br>浅草の喰べもの「中央公論 夏期特別號」1920(大正9)年7月<br>夏と町々「時事新報 夕刊」1929(昭和4)年6月1日~30日<br>絵空事「新潮」1932(昭和7)年3月<br>一年「東京新聞」1946(昭和21)年4月15日<br>浅草よ、しずかに眠れ「苦樂」1948(昭和23)年2月<br>夜店ばなし「婦人公論」1931(昭和6)年7月<br>除夜「週刊朝日」1930(昭和5)年12月28日號<br>正月「婦人公論」1932(昭和7)年1月<br>水の匂「文藝春秋」1941(昭和16)年7月<br>町々…… 人々……「別冊文藝春秋」1955(昭和30)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,294 字 · 318 页

青空文庫

白足袋、表附の下駄、絽の袴を穿き、縫紋の単羽織を着た四十七歳のきわめて薄い髭をもった紳士(なぜ四十七と分ったかといえば自分からはッきりそういいましたから)がすなわち夏外套を脱いで助手の大学生にわたしながらしきりに何か薬の効能を説いていました。いやしくも人間なら誰でもがもっている病気、そうして古来、どんな医者でも薬でも決して直らないとされている病気、それを即座に、みているまえですぐにでも直してみせることの出来る薬を発見した、そのためにはしかし学校を出たあと二十年の年月を無駄にした、二十万円の金をつかい果した、もしうたがわしくば牛込喜久井町所在のなにがし合資会社をたずねて来い、自分がその会社の代表社員ということはこれこの免許状がこの通り説明している。――そうしたことばかりいつまでも饒舌りつづけてついにその薬が何に効く薬かはッきりさせません。――しびれを切らしてそこを退きました。

第三の人の輪のなかを覗きました。紺の腹掛、うでぬき、脚絆といった恰好の草鞋ばき。……そうした古風ないでたちの若い男が大きな声でしきりに何か饒舌っています。これは面白そうだと無理から前へ出ました。