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あさくさふどき

浅草風土記

久保田 万太郎

雷門以北「東京日日新聞 夕刊」1927(昭和2)年6月30日~7月16日<br>吉原付近「中央公論」1929(昭和4)年2月<br>続吉原付近「中央公論」1929(昭和4)年3月<br>隅田川両岸「中央公論」1935(昭和10)年9月<br>浅草田原町「三田文學」1912(明治45)年2月<br>あやめ団子「花形」1920(大正9)年8月<br>相模屋の路次・浅倉屋の路次「新演藝」1920(大正9)年8月<br>浅草の喰べもの「中央公論 夏期特別號」1920(大正9)年7月<br>夏と町々「時事新報 夕刊」1929(昭和4)年6月1日~30日<br>絵空事「新潮」1932(昭和7)年3月<br>一年「東京新聞」1946(昭和21)年4月15日<br>浅草よ、しずかに眠れ「苦樂」1948(昭和23)年2月<br>夜店ばなし「婦人公論」1931(昭和6)年7月<br>除夜「週刊朝日」1930(昭和5)年12月28日號<br>正月「婦人公論」1932(昭和7)年1月<br>水の匂「文藝春秋」1941(昭和16)年7月<br>町々…… 人々……「別冊文藝春秋」1955(昭和30)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,294 字 · 318 页

青空文庫

五

で、座敷へ通る、芸妓が来る。――その芸妓の柳橋ばなれのしていることはいうをまたない。――そのとき「かァさん」は若旦那のそばへ寄っていった。

「今日出たばかりの新妓があるんですけれど呼んで下さらない?」

芸妓の、君、新妓ってものがありますか?――ええ、先生、伯龍先生?……

ものを知らないってことは無教養ってことだ。臆面がないってことはその無教養を平気で暴露出来る無神経のことだ。聞いたふうってことはその無神経をまた平気で逆用出来る浅墓さのことだ。――待合のかみさん、女中、芸妓、その位なものの簡単な写生一つ出来ないで真打がすさまじい。……その晩、鈴本のおもてへ出ると一しょに声を出してわたしはわらった。

それッきり聴かない。それ以来聴かない。……

「けど、何といったっていまは金語楼の天下ですよ。――三語楼だってこのごろは押されています。」

そういううわさを聞くたんびに寄席の人気の立たないのはあたりまえだ。落語の席のうだつのあがらないのはもッともだと、いつもわたしはそう思った。

五

で、昨夜。

わたしの入って行ったとき、高座に、背広すがたの若い男が両人ならんでいた。