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しんやのしちょう

深夜の市長

海野 十三

「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页

青空文庫

18

僕がなんでこのエラ方の会談にオブザーヴァとして選ばれたのか分らなかったが、恐らくそれは何かオブザーヴァの必要があり、そしてオブザーヴァするにはあまり圧迫的な人物でないのがいいためだったのであろう。――とにかく僕は如何なる会話が始められるか、大いに興味を持った。

18

「それで動坂さん」と黒河内総監は、懐手をしたままで口を切った。「高屋さんの提案どおり、土地払下案をここ三日ほど市会に懸けるのを猶予してやれませんか」

なんだ、やはり土地売却問題なのか。市長が困り果てて、総監の救け舟を呼んだものと見える。しかし総監を調停者に立てるとは何事か!

「それア何度云っても同じことですよ。猶予するもせんも儂にはどうにもならぬことです」

「しかし動坂さん。聞くところによると、本案を今日上程するように計らったのは、貴下だということだが……」

「黒河内さん。それは何者かの為めにせんとするデマですよ。貴下も、その連中に乗じられているのだ。第一、あの土地払下の件は今更始まった問題ではなし、前から下相談もあり、誰も異議はないといっている。市長も数日前、賛成のような口吻を洩している。