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しんやのしちょう
深夜の市長
海野 十三
「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页
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僕等の円タクは速水輪太郎の心配と、僕の募りくる懐疑とを乗せて、遂に目黒駅前まで来てそこにストップしたけれど、結局目の前に、昨夜と同じような陸橋風景を見出したばかりで、途中「深夜の市長」に関する手懸りは何にも見当らなかった。
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明くれば、月が代って、ここに四月一日を迎えた。
遉に不死身を誇る僕も、連夜の奮闘にすっかり参ってしまった。それでその日は、例によって円タクを飛ばす手を用いたが、たとえ時速百キロの快スピードを出させても、もう門限には間に合わぬことが分っていたので、自棄気分になって、なるべくノロノロとやるようにと命じ、その代りこの時間をウツラウツラと居睡りに提供することとした。いや全く、近来この日ぐらい気もちよく居睡りをしたことがなかった。
お蔭で、埃だらけの遅刻簿を出して貰って、判子をついたが、庶務課の有象無象からいい加減面白い見世物扱いされ、大いに気まりが悪かった。
主任の前へ行って、仕方がないから「昨夜から腹を壊しまして」といってその場を取りつくろうと主任はギイギイ云う壊れかかった回転椅子の上に急に反り身になって、「……一体腹を壊すなんて、日頃の緊張が足りないからだ、よし今度から道場へ出たまえ、一手指南をしてやる」