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しんやのしちょう
深夜の市長
海野 十三
「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页
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――老人は外へ首を出している様子。
「ああ、ここだ」と靴音と人声とが一緒に近づいた。
「おい、『深夜の市長』、起きてるか。――」
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「おう、――」と、下の老人は人を喰ったような返事をし「商売繁昌だな。人殺しも賑やかでいいのう」
「なにイ……」
と別の声が憤りを見せるのを、
「オイ云うな」と始めの声が停めて「どうだ『深夜の市長』、逃げて来たやつを隠しゃしないだろうネ」
僕はハッとした。途端に壁を抑えていた靴がズルリと下に滑った。十センチも滑ったような気がしたが、本当はほんの僅かだったかもしれない。こいつはいけない――と、僕は歯を喰いしばってウンと両足を踏んばった。
「相変らず鼻が利くねえ」と老人の声で「叶わないよ、お前さん方には……。さあさあ中に一匹だけ隠して置いたから、摘みだして手柄になせえ」
もう少しで僕は呀ッと叫ぶところだった。ひどい奴があればあったものだ。引張りこんで置いて、僕を相手に売りつけようとは……。八ツ裂にしても足りない奴……と、憤慨し、こっちから進んで飛び下りようとした刹那、
「いや、悪かった悪かった、『市長さん』騒がして済まなかったネ。はッはッはッ」