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しんやのしちょう
深夜の市長
海野 十三
「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页
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いや畸人といったのでは足りない。もしも常識豊富な狂人(?)という反語的ないいあらわし方が許されるものとしたら、それは一等適切に「深夜の市長」と呼ばれる人物を云いあらわしているだろう。その反語的な性格こそ、素性の知れない彼の「深夜の市長」の持っている不可解なミステリーそのもののような気がする。
ここらで夜のT市の三嘆を止め、では僕を「深夜の市長」の許へ送りつけるようなことになった奇怪きわまる事件に話を進めようと思う。
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電車の見えない電車道に交叉して、右へ延びている二十二メートル道路があった。そこをゆけば、別の濠割まで下らなくて亀井戸へ出られる。この広い道路も、いまは人影一つ見えない水晶宮殿の廊下のようであった。僕はそっちへ曲りこんで、ブラブラと約百メートルも行ったかと思われる頃、何者とも知れず、キャーッと魂消る悲鳴を発したものがあった。声の大きさからいっても声音から云っても、人間以外の生き物とは思われなかった。深夜の街をうろつくこと茲に何十度何百度か知らないほどの僕だったけれど、このような怪しい悲鳴を耳にしたのは、これが始めてだった。僕はギクリとして、その場に足を停めた。