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しんやのしちょう

深夜の市長

海野 十三

「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页

青空文庫

儂はもう、こんな不純極まる席に列しているのを好まんから、これで退席しますよ。……」

そういって動坂は悠々と立ち上った。

「いや動坂さん、御苦労でした。では高屋さんも、それから浅間君も……今夜の協議はこれで解散ということにしましょう」

黒河内総監は別に愕きも怒った様子もなく、静かに閉会を宣した。

僕たちは、そのまま階下に降りた。女中たちは不意を喰って玄関へ飛んで出た。動坂三郎を先頭に総監、市長、僕の順で履物を履いた。そして女達の艶かしい声に送られて、植込みの傍を通って表へ出ようとしたその一刹那……

「呀ッ、……」

と叫ぶ動坂の声、その声の終らぬ先に、ポンポンと、二、三発の銃声が通りの方からした。途端にシューッと音がして、僕の耳許を掠めて一発の弾丸が後へ抜け、カーンと竹を並べた垣根に当って跳ねかえった。このとき誰か庭石の上に、ドッと倒れた者があった。

全く不意の襲撃だ。何者の仕業?

反射的に、僕は表へ飛びだした。

「……母アちゃん、よしよ。撃っちゃいや」

僕は待合の向い側で、鋭く泣き叫ぶ女の子の声を聞いた。

「撃っちゃいやよ、あたいの父うちゃんじゃないか……」