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しんやのしちょう
深夜の市長
海野 十三
「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页
腕時計の指針を探ると、もはや時刻は十二時間近だった。さあ電話をかけるのだ。心当たりの辻々を縫い歩いているうち、ようやく高架橋の畔りに、置き忘れられたようにポツンと立っている公衆電話函を見つけることができた。
電話は検事局の宿直室にすぐ通じた。雁金検事を呼んで貰って、僕は待合紅高砂に於ける三巨頭協議のオブザーヴァとしての報告と、それに続いて起った狙撃事件とを詳細に亘って報告した。
「いかがでしょうか。そちらへ参った方がよければ、すぐ駈けつけますが……」
というと、雁金検事は、
「イヤ電話で詳細分ったから、今夜は来なくてもいいよ。こっちはこっちで人手が十分だから、手配に心配はいらぬ。君はあまり身体に無理をしないで、ちと休養を摂りたまえ」と優しい言葉をかけて呉れたが、最後に不図思いだしたように言葉を付け加え「……だが、逃走した加害者の女の所在が分ったら、そいつはすぐ報告を頼むよ」
そこで電話は切れたが、雁金次席の最後の言葉は、僕の胸をギクンと衝いた。いま自分は忠実なる司法官として、加害者がお照であることを報告したのだ。それに対して上官は、加害者の逮捕を僕にも命令した。