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しんやのしちょう
深夜の市長
海野 十三
「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页
「明くものかッ」「明くものなら先刻明いた筈だ」「まだその上に恥を掻きたいかッ」などと相変らぬ野次が飛んだ。
黒河内総監は、別に立腹の模様もなく、入口の方に向って手をあげた。すると合図に応じて、一隊の警官隊がゾロゾロと入って来た。「横暴!」「弾圧排斥!」の声が起った。
何事が始まるのかと思っていると、警官隊の中から飛び出して来たのは、よく街路などで見るアセチレン瓦斯を使う熔融切断器を持った職工体の男だった。彼は人造人間の頭のようなグロテスクな円筒形の冑を被っていた。呀ッと驚く議員たちを尻目に、彼は忽ちシュウシュウと音をさせたかと思うと、途端に器械の尖端から噴きだす目も昏むような真青な火焔をズバリと金庫の扉にさし向けた。遉がに堅きを誇る鋼鉄製の扉も、この高熱火焔に会っては一とたまりもなく、パチパチと火花は四方に飛散し、アレヨアレヨと云っている間に黄金の鍵のさしこまれたまま金庫の鉄扉の真中には大孔が穿たれた。
遉がの動坂一派の荒武者どもも、この豪快な金庫の鍵?の使い方にすっかり度肝を抜かれた形で誰一人声を立てる者もなかった。――待望の扉は除かれた。さてその中を改めてみると、収ってあった筈の土地払下案をはじめ一切の重要書類が影も形もなかった。