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しんやのしちょう

深夜の市長

海野 十三

「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页

青空文庫

金属鈑の貼ってある階段を僕はコトンコトンと、一段一段昇っていった。

あたりの壁にチャ―ンチャーンと不気味な反響をたてながら、何階まで昇ったのかはしらないが、遂に僕は、薄明りのするフラットの穴をくぐって、最上の室に頭を出した。

「あ、――」

僕は予期していたものの、眼前に展けた雑然たる狭い部屋のうちに、後向きになったまま、黙々として妙な器械の中を覗いている人物を発見して、すくなからず驚いた。その人物こそ、尋ねる速水輪太郎氏に違いないのだ。

僕が階段を踏み鳴らしながら、その部屋のリノリウムの床の上にトンと足を載せたのにもかかわらず、かの速水氏は微動だにしなかった。真逆、器械に向って、立ちながら居睡りをしているわけでもあるまいに、どうしてこの侵入者の気配を感じて、後へふり向かないのか、僕には大層不審だった。

「今晩は、――」

そのまま黙って背後に立ち尽しているわけにもゆかないで、僕は部屋の主人公に、静かに声をかけた。

ところがその主人公は、ウンともスンとも返事を発しなかった。僕はそのまま暫く突立っていた。そのうちに主人公の用事が済むだろうと思って……。

だが、その予想はなかなか適中しなかった。